2006年 9月 28日

座禅が座禅を座禅する

投稿者 by vulcan at 22:27 / カテゴリ: 存在理由 / 0 コメント / 0 TrackBack

澤木老師は、生涯娶らず、寺を持たず、警策(きょうさく)1本持って旅に生きた。「昭和の最後の雲水」と言われた人である。老師の接心があると、全国から信奉者が安泰寺に集まった。京都大学の哲学の学生たちもいた。命がけで座禅に真理を求めている人たちが少なくなかった。
接心の講和の中で、澤木老師は、「座禅が座禅を座禅する」という言葉を言われたのを覚えている。また、「座禅をしても何にもならん」としきりに力説しておられた。座禅をしたら悟りを開くとか、肝が据わるとか、超能力がつくとか、何かの結果を期待して座ることを厳しく戒められたものである。抜き身の日本刀の刃の上を裸足で歩くようなものだとも言われた。右に一歩逸れても千尋の谷底、左に一歩踏み外しても千尋の谷底。たちまち野狐禅、つまり野狐に化かされて馬鹿な真似を大真面目にする世界、真実とは縁もゆかりもない禅の魔境にはまってしまうのである。

これは、T神父の著書の一節です。T神父及びT神父の著書については、別の機会に述べてみたいと思いますが、私はこの、「座禅が座禅を座禅する」という文句をすっかり気に入ってしまいました。

真理を究明しようと座禅をし、あるいは、精神を鍛錬しようと座禅をする修行者たちに、老師は「座禅をしても何にもならん」というわけです。非常に厳しいお言葉だと思います。「何を言い出すのかこの老師は。意味がないのであれば座禅をしても仕方がないではないか。」と思った修行者は去っていくことでしょう。

本当の真理というのは、因果関係を超越した領域に存在するのだと思います。世の中は因果関係で成り立っていることは、否定しがたい事実だと思いますが、しかしそれを否定しないことには真理には到達しないわけです。それゆえ「座禅をしても何にもならん」と言ったのでしょう。

「座禅が座禅を座禅する」を聞いた修行者たちは、「老師ほどの人物のことだ。何か深い意味があるに違いない。」と思いながら、この言葉をどう解釈したらいいか、あーでもない、こーでもないと思考することになると思いますが、その行き着いた先には、『何の意味も存在しない』ということが待っているのではないでしょうか。

つまり、「座禅とは無意味だ」ということです。しかし、我々の感覚で無意味だと言っているのではなく、「意味を超えたところに座禅がある」ということを理解しなければならないわけで、それが理解できなければ、さっさと寺から去るべきなのでしょう。

座禅をしたこともない私が、知ったようなことを申し上げるのはどうかという意見もあるかもしれませんが、私はそのように理解しました。

さて、最近はまっている『道元断章-『正法眼蔵』と現代』(中野孝次)に次の一節がありました。

江西の馬祖道一(ばそどういつ)が南嶽懐譲(なんがくえじょう)のもとで修行していたとき、南嶽が密かに心印を馬祖に得させた。これが磨塼(ません)の故事の由来だ、と道元は言って、こんな会話をしるす。
馬祖はつねに坐禅にはげんでいたが、まだわずか十年をへたときのこと、南嶽がふいに馬祖の庵を訪れ、馬祖はつつしんで師を迎えた。

南嶽「お前はこのごろ何をしているか」
馬祖「このごろわたしは祗管打坐(しかんだざ;ひたすら坐禅)するのみです」
南嶽「坐禅して何をしようとしている」
馬祖「坐禅して作仏(仏になる)を志しています」
すると南嶽は一片の塼(せん;瓦)を持ってきて、馬祖の庵のそばの石にあてて磨き始めた。
馬祖「和尚、何をしておいでです」
南嶽「塼を磨いておる」
馬祖「塼を磨いて何をなさろうというんです」
南嶽「磨いて鏡にする」
馬祖「塼を磨いて、どうして鏡とすることができましょうや」
南嶽「坐禅して、どうして作仏することができようや」

思うに、俗世間においても、意味を求めるべきではないのではないかと感じています。

好きな人に尽くす、奉仕活動をする、人を助ける、そうしたことは、いずれ意味が生じてくるものでしょうが、行なっている本人は、意味を考えながら行なうことは戒めなければならないと思います。意味を考えること、すなわち見返りを期待することです。

【2006/10/4追記】

『祇管打坐』について、曹洞宗の僧侶が考察していらっしゃるサイトを見つけましたので紹介するとともに、一部を引用します。

只管打坐論

なお、何故只管打坐が安楽の法門になるかといえば、我々に楽や苦を与える主体は何であろうかを考えたときに、答えは出る。そこで、その原因が我々の心や身体であることは容易に理解できる。であれば、その心や身体がどのように成り立っているかを直観できれば、楽も苦も自在である。したがって、只管打坐が必要になってくる理由も明らかである。

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