2006年 10月 25日

教育基本法案比較検討(3)

投稿者 by vulcan at 17:55 / カテゴリ: 雑感 / 0 コメント / 0 TrackBack

最後に「インターネット教育」、「教育行政」、「教育振興基本計画」について所見を述べてみたいと思います。

インターネット教育

現行法(教育基本法)

対応する条文なし

政府案(教育基本法案)

対応する条文なし

民主党案(日本国教育基本法案)

第十七条(情報文化社会に関する教育)
 すべての児童及び生徒は、インターネット等を利用した仮想情報空間におけるコミュニケーションの可能性、限界及び問題について、的確に理解し、適切な人間関係を構築する態度と素養を修得するよう奨励されるものとする。
2 すべての児童及び生徒は、文化的素養を醸成し、他者との対話、交流及び協働を促進する基礎となる国語力を身につけるための適切かつ最善な教育の機会を得られるよう奨励されるものとする。
3 すべての児童及び生徒は、その健やかな成長に有害な情報から保護されるよう配慮されるものとする。

インターネットが社会的な問題を生み、また、欠くべからざるツールであることは周知の事実ですが、果たして本条文を教育基本法に盛り込むべき性質のものかと考えると、疑問に思います。特に3は無理があり、かつ返って規制する方が教育上も弊害が大きいのではないかと思います。

本質的に、人間には健全な心と邪悪な心が内在しているという人間の性について、あるいは死生観について、宗教教育を通じて教育することを一義的に行なうべきであり、その礎の上にインターネット教育を持ってくるべきです。いずれにせよ、基本法においてインターネット教育について触れることは勇み足であると考えます。

教育行政

現行法(教育基本法)

第十条(教育行政)
 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。
2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

政府案(教育基本法案)

第十六条(教育行政)
 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

民主党案(日本国教育基本法案)

第十八条(教育行政)
 教育行政は、民主的な運営を旨として行われなければならない。
2 地方公共団体が行う教育行政は、その施策に民意を反映させるものとし、その長が行わなければならない。
3 地方公共団体は、教育行政の向上に資するよう、教育行政に関する民主的な組織を整備するものとする。
4 地方公共団体が設置する学校は、保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画する学校理事会を設置し、主体的・自律的運営を行うものとする。

民主党の説明に「民主党は、現行法の「不当な支配」という言葉の定義をめぐる、子ども不在の不毛な論争を教育現場から一掃するため、「民主的な運営」という表現にした。」とあります。確かに、『不当な支配』という文言の存在によって、指摘にあるような本質的な部分をなおざりにした戦いが繰り広げられてきたと考えます。

また、政府案にある『国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力』というのは、いかにも玉虫色で、日本の悪しき習慣が現れていると考えます。この点について、民主党案はすっきりしており、評価すべきと考えます。

現在の教育行政が三位バラバラ(学校設置者は市町村/人事権は都道府県/学習指導要領は国)で、これを見直さなければならない。また地方自治体では、予算編成権は首長、教育行政は教育委員会という二元性になっており、これを一元化する必要があると考える。その意味で、地域住民の民意を教育行政にも反映させるという観点から、直接選挙によって選ばれる首長を最終的な教育行政の責任者として位置づけることがより適切だと判断した。

ここで、確認しておきたいのは、民主党案の第7条第3項『国は普通教育の機会を保障し、その最終的な責任を有する。』との関係です。

両者を比較すれば分かるように、国は、普通教育の機会を保障しその責任を持つこととし、教育行政は地方に委ねるということが民主党の提案です。これでもグレーな部分は出てくるでしょうが、勇断と見てよいと思います。

教育振興基本計画

現行法(教育基本法)

対応する条文なし

政府案(教育基本法案)

第十七条(教育振興基本計画)
 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

民主党案(日本国教育基本法案)

第十九条(教育の振興に関する計画)
 政府は、国会の承認を得て、教育の振興に関する基本的な計画を定めるとともに、これを公表しなければならない。
2 前項の計画には、我が国の国内総生産に対する教育に関する国の財政支出の比率を指標として、教育に関する国の予算の確保及び充実の目標が盛り込まれるものとする。
3 政府は、第一項の計画の実施状況に関し、毎年、国会に報告するとともに、これを公表しなければならない。
4 地方公共団体は、その議会の承認を得て、その実情に応じ、地域の教育の振興に関する具体的な計画を定めるとともに、これを公表しなければならない。
5 前項の計画には、教育に関する当該地方公共団体の予算の確保及び充実の目標が盛り込まれるものとする。
6 地方公共団体の長は、第四項の計画の実施状況に関し、毎年、その議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。

第二十条(予算の確保)
 政府及び地方公共団体は、前条第一項又は第四項の計画の実施に必要な予算を安定的に確保しなければならない。

民主党案はかなり踏み込んだ規定であり、基本法として相応しいかどうかの議論があると思います。しかし、政府を、会社でいう取締役会として機能させ、執行役として地方自治体の長が実際に行政を行なうという基本方針がある以上、実効性を高めるとともに、監視を強化する要請から、上記のような踏み込んだ規定を設けることは、意義が大きいと考えます。

いずれにせよ、相当の拘束力を持ちますので、覚悟の高い法案だと言えると思います。

民主党コメンタール

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