2006年 10月 26日

危険な話の終焉を祈って(4)

投稿者 by vulcan at 11:44 / カテゴリ: 存在理由 / 0 コメント / 0 TrackBack

四たび、温心堂主人による『危険な話の終焉を祈って』から引用します。

think-Pu.net-考えよう、プルサーマル・プルトニウム

危険な話の終焉を祈って(1)

危険な話の終焉を祈って(2)

危険な話の終焉を祈って(3)

原子力と環境 中村政雄 中公新書ラクレ

グリーンピース創始者は、なぜ転向したのか..と、タイトルにも増して大きな帯の文字。

グリーンピースは反捕鯨で知られる環境団体でその活動は反原発にも及び、核物質を積んだ輸送船を追跡するなど、その行動力には定評がある。

自ら調査・研究が出来ないものにとって、本や反原発団体のWebページは貴重な情報源となっている。

私は、原発の存在に恐怖を抱いている。安全、安全とばかり聞かされても、真実の声が伝わってこない。原発について調べれば調べるほど不安だけが大きくなるばかりだ。どこかに確かな安全情報がないかと、探すものの、安心広告以上のものを探し出すことが出来ないでいる。原発推進の学者や識者の意見は決まって、CO2による温暖化やエネルギーの問題と絡め、安全管理をしながら推進という話に行き着く。

安全管理をしても事故は起こるし、いままでも小規模な事故は起こっている。ひとたび事故が起こると手の付けようがないのが原発事故の恐ろしいところだ。事故の拡がりを食い止めるすべもなく、被爆の危険のため被害者の救出もできない。避難するにも交通網はパニック状態で身動きがとれない。追いかける死の灰から逃れるには風よりも早く、1000Km単位で移動しなくてならない。

つまり、事故が起こればすべてが終り、終わったとこから生き延びた人々の苦悩が始まる。「NIPPONチャチャチャ!」とスポーツやイベントに興じているようでは、この地獄図の空想すらできないだろう。

本書は、少しでも安全情報が欲しいと思っている矢先の出版であった。グリーンピースの創始者の話なら、反原発から賛原発に転じた信頼のおける安心を示してくれるだろうと期待を寄せた。

結果から言うと、惨憺たる本であった。著者は科学の素養があり、新聞社の科学部記者を経て現在、科学ジャーナリストという職にある。書物の中には読む価値のないものもあるが、読む価値はなくとも批判する価値のある本がある。まさに、この本がそれに値する。科学部の記者として一体、この著者は何を見て、何を考え行動してきたのだろうか。まさに電力会社の広告、「原子力物語」から一歩も出ることがなく、新たな情報を得ることはできなかった。

2005年4月28日。反原発団体グリーンピースの共同創始者の一人であり、環境学者のパトリック・ムーア博士がアメリカ上院のエネルギー・天然資源委員会で証言した。「原子力は二酸化炭素(CO2)も大気汚染物質も排出せず、化石燃料に代わって世界中のエネルギー需要を満たすことのできる唯一、最善のものである」と言った。

CO2と温暖化が出てくれば、すでに後の展開は知れたものだ。冒頭から失望させられる。過去に自分が主張してきたことをいとも容易に否定できる心境の変化にこそ興味がある。そして、著者はこの年の12月、ムーア博士に転向の理由を直接聞く機会を得た。

  • 原子力の軍事利用と平和利用の区別がつかず反対した。ところが原子力発電は安全で環境にクリーンであることがわかった。地球に住む65億人が食料やエネルギーを必要としている。その解決策が原子力エネルギーである。
  • 現在、世界のエネルギーの約86%は化石燃料で賄われている。残りの原子力と水力で約7%、残り1%以下がその他である。環境活動家は化石燃料、原子力、水力に反対している。残り1%以下の方法でエネルギーを賄うのは実用的ではない。
  • 冷戦が終結し、核エネルギーと核兵器を結びつけ、原子力の開発が兵器の隠れ蓑である時代は終わった。
  • 原子力発電のコストの約1/3は安全システムの整備にあてられ、世界で約440基の商業用原子炉が安全に稼動している。
  • 世界には多くの誤った、歪められた情報が多すぎる。原子力はその良い例だ。事実とフィクションを見分ける力を身につけ、正しい情報か恐怖を煽ろうとしているのかを判断してほしい。
  • 環境保護活動家の多くは原子力に対し、全く非寛容(ゼロ・トレランス)だ、そこには科学的な検証や論理的な考えかたなどなく、宗教的な信念だけだ。そのため対話も成り立たない。
  • 化石燃料によるCO2の排出を抑えるため、原子力エネルギーをベースに水力、地熱、バイオマス、風力、太陽光などの自然エネルギーを組みあわせていくべきだ。

以上が5ページに渡る要旨であるが、6ページ目には、「会場が沸いたのはグリーンピースの資金源について語ったときだった」と、そこから9ページを割いて反原発の活動資金と内情を暴露する。「環境を大切にしている」というポーズをとるため、50の財団がグリンピースに資金を提供しているという。

グリーンピースがいかにお金にまみれているか、いかに教条主義か、いかに風評を煽るか、ついでに「ロシアやアメリカの情報機関とつながっていることを聞いた」と語ったという。著者のコメントは「(博士は)冗談めかして語ったが本当だろう」、「(グリンピース)の実体に迫る報道がないのは情けなく残念だが、日本はまだその程度の情報小国なのである」。

これが元・新聞記者、現・科学ジャーナリストの言葉だろうか?数値や実証されていること、実際行われていることを示し原発の議論に正面から挑むべきだ。低次元の井戸端会議に沸いているくらいでは、どちらが情けなく残念なのか。資金源や闇の部分は賛原発こそ巨大なものだ。しかし、闇の部分を取り上げる手法は反原発派も用いるのでお互い様として、だから原発はクリーンだという主張はできないし、原発の危険までもが帳消しにはならない。

私がもっとも知りたかった、「グリーンピース創始者は、なぜ"転向"したのか」という大きな帯文字のテーマは実質21ページで終わる。読書の意欲もここで息絶える。残り150ページは、「原子力・クリーン・安全」のお題目を繰り返し唱える賛原発のプロパガンダであった。

クリーン、安全の大合唱こそ胡散臭く、心配していることだ、危機意識の欠如こそが事故の重大な原因になるのだ。安全、クリーンという宣伝の他、エネルギーや温暖化に危機感のない日本人のことや人口増のためエネルギーが要ることを主張し、反原発運動の迷妄を揶揄する。

最終章で、日本文化を語り、神道や戦前を礼賛するのには違和感を覚えた。これが科学ジャーナリストとして「現実に立脚した視点(本の帯より...)」といえるのだろうか。反原発論者の仕掛けた地雷を避けながら歩くと、こんな話がせいぜいであろう。電力会社の広告をそのまま使った、お太鼓持ちに等しい。

こういう人たちにのみ死の灰が降り注げばよいが、困ったことに原発の被害は平等である。少なくとも、この本については賛原発の話の軽さと浅さで、結果的に説得力のある反原発の書となった。

グリーンピースではありませんが、ピースボートも信頼の置けない団体であることは、『ヒロさん日記』の『ピースボートの「核」しきれない初体験』で理解できます。

こうした反核団体の体たらくさ加減が、真相をうやむやにする一つの要因だと思います。もしかすると、反核団体にいつの間にか取り入った賛核派の『トロイの木馬』によって、いいように混乱させられているのかもしれませんが、そうであったとしても、脇の甘さを指摘せざるを得ません。

次に紹介するのは、20年間、原発の現場で働いた平井憲夫(故人)の「原発がどんなものか知ってほしい」という話である。原発関連の掲示板やブログなどでも頻繁に目にするが、「嘘が多い」と軽くいなす電力関係者もある。

日本の原発はびっくりするような大事故を度々起こしています。スリーマイル島とかチェルノブイリに匹敵する大事故です。1989年に、東京電力の福島第二原発で再循環ポンプがバラバラになった大事故も、世界で初めての事故でした。そして、1991年2月に、関西電力の美浜原発で細管が破断した事故は、放射能を直接に大気中や海へ大量に放出した大事故でした。

ー cut ー

美浜の事故の時は・・・原子炉の中の放射能を含んだ水が海へ流れ出て、炉が空焚きになる寸前だったのです。日本が誇る多重防護の安全弁が次々と効かなくて、あと0.7秒でチェルノブイリになるところだった。それも、土曜日だったのですが、たまたまベテランの職員が来ていて、自動停止するはずが停止しなくて、その人がとっさの判断で手動で止めて、世界を巻き込むような大事故に至らなかったのです。

たぶん「・・・チェルノブイリになるところだった」という話を「嘘」と言いたいのだろうが、事故が起こった事実に揺るぎはない。不安を煽ることに神経質になる理由こそ知りたいものだ。

原発こそが最も環境を汚染することを語らず、危険性や経済性の本質を語らず、原発のためにこそ火力発電が必要なことも語らない。ここまでして続けたいのは、原発が発電を目的とはしていないからではないか。

チェルノブイリの事故から20年を迎えた4月、数々の報道特集が組まれた。現在、廃墟となった原子炉は危険が去らず管理が続いている。そこに近づくと徐々にアラームの音が速くなり急を告げる。ここで作業をする人々は被曝しているのだ。そして原子炉近くでのまとまった作業は困難だという。平井氏の話から、さらなる引用である。

放射線量が高いところですと、1日に5分から7分間しか作業が出来ないところもあります。しかし、それでは全く仕事になりませんから、3日分とか、1週間分をいっぺんに浴びせながら作業をさせるのです。

ー cut ー

稼動中の原発で、機械に付いている大きなネジが1本緩んだことがありました。動いている原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人30人を用意しました。1列に並んで、ヨーイドンで7mくらい先にあるネジまで走って行きます。行って、一、二、三と数えるくらいで、もうアラームメーターがビーッと鳴る。中には走って行って、ネジを締めるスパナはどこにあるんだ?といったら、もう終わりの人もいる。

ネジをたった1山、2山、3山締めるだけで160人分、金額で400万円くらいかかりました。なぜ、原発を止めて修理しないのかと疑問に思われるかもしれませんが、原発を1日止めると、何億円もの損になりますから、電力会社は出来るだけ止めないのです。

「百聞は一見に如かず」。クリーン、安全と言う人々よ...原子炉を囲み、人間の輪を作ってアピールしてくれ。そして、それから10年、放射能による障害が何事もなければあなたたちの言い分を認めよう。

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